複数の傷病がある場合の障害認定

複数の傷病がある場合でもできるだけ、メインの病気、ケガで障害年金を請求します。そのメインのものだけで、1級になる、とわかっていたら、それ以上の等級はないので、診断書の料金がムダになるからです。

 

また、障害認定は単純な足し算ではないので、これとこれとこれとで足し算すれば2級になるだろう、というものでもありません。うつ病で3級だった人が、さらに別の病気で両耳の聴力レベルが70デシベルになった場合(3級)、2級になるのではなく3級です(併合認定表では交わるところの数字が6号となるため、3級)。

人工透析など
複数障害の障害年金

しかし、例えば、糖尿病は合併症が有名ですが、眼の障害もおきて、人工透析もおこなっているとなると、人工透析だけでは2級ですが、さらに上位等級に認定される可能性があります。

 

このように診断書1枚だけで勝負するか、2枚出してみるかは、社会保険労務士でも経験を積まないとなかなか判断しにくいところです。また、どれも重要な傷病で診断書を複数出したほうがいい場合でも、併合判定になるのか、総合認定になるのかについて、役所の職員でも間違って回答して後から訂正したということもあるくらいややこしいものになっています(外部障害と内部障害が併存する場合など)。

 

複数の傷病がある場合の障害認定について、まずは、基本的なところを書きますと、以下の通りになります。

併合認定

障害認定基準の最後のほうにある、「第2章 併合等認定基準」をみます。ここに書いてある併合判定参考表、併合認定表に基いて行われる認定方法です。

 

身体の機能の障害もしくは病状と精神による機能の障害は、障害認定基準の「第19節 重複障害」のところに書いてありますが、ここの部分にも、「第2章 併合等認定基準」により認定すると書かれています。

 

総合認定

内科的疾患が複数ある場合や、各障害の認定基準のところで、総合的に認定する、のように書かれている場合用いられる認定方法です。
その内科的疾患が同じ原因の身体の機能の障害または精神による機能の障害がある場合、それぞれの身体の機能の障害または精神障害について併合判定をして、さらに内科的疾患と併合判定を行うことになります。

 

差引認定

主に、肢体の障害、眼の障害、耳の障害の障害認定に用いられているもので、元々障害がある部位にさらに傷病が発生した場合、現在の障害の程度から前発の障害の程度を引いて行われる認定方法です。

ただし、「はじめて2級の年金」に該当する場合は、行わないとなっています。

 

さまざまなケース

今回も架空のケースを使って考えてみましょう。

ケース1糖尿病が原因の眼の障害と人工透析

糖尿病が原因で、視力障害が発生し、両眼の視力がそれぞれ0.06以下になっていました。その後、糖尿病の合併症により、腎臓機能が低下し、人工透析となりました。

 

最初の眼の障害の時は、3級の障害厚生年金を受給していたのですが、眼の障害も、腎疾患(人工透析)による障害も障害の原因は同じ、糖尿病です。

 

原因が同じなので、「額改定請求」によって、上位等級に認定してもらいます。

 

「併合等認定基準」の併合判定参考表によりますと、眼の障害のほうは、「3級5号」となっています。

これに今回、腎疾患(人工透析)である「2級4号」が増えました。

併合判定表によりますと、「3級5号」と「2級4号」が交わるところは、1号となっていて、そこをみますと1級となります。

 

これにより、額改定請求で1級と認定してもらうことになります。

ケース2最初は精神の障害、次に事故による肢体の障害

20代の国民年金の時代に統合失調症が発症し、年金の請求をしたものの3級だったケースです(国民年金の障害基礎年金は1級、2級しかない)。

 

その後、肢体の障害(下肢の関節障害)が発生しました。前発の精神の障害は、「3級7号」、後発の肢体の障害は「3級6号」です。

「3級7号」と「3級6号」が交わるところは、4号となっています。4号の等級をみますと2級となっていることがわかります。

 

ケース3最初が右手の親指の指節間関節で、小指を近位指節間関節で欠いていたところ、さらに事故で人差し指、中指、薬指も近位指節間関節で欠いてしまった場合

これは差引認定となります。

 

最初は8号の8(前発の活動能力減退率は18%)次の事故で、7号の4(活動能力減退率56%)が増え、その結果、親指を指節間関節で欠いて、他の4つの指が近位指節間関節で欠くことになったため、現在は、6号の7(活動能力減退率67%)となっています。

 

67%ー18%=49%となります。症状固定ですから、治ったものとして、障害手当金となりますが、障害認定基準には、後発障害の状態が併合判定参考表に明示されている場合、その活動能力減退率が差引減退率より大である場合(今回の場合がまさにそうです)、その明示されている後発障害の障害の活動能力減退率により認定することになっています。

 

そのため、この場合は、49%ではなく、56%で認定されますから3級となります。

 

ただし、この場合は後発障害の状態が併合判定参考表に「明示」されていましたから後発障害のほうで認定されたのでいいのですが、例えば、生まれながらの障害で、両眼の視力の和が0.05で2級の人がいたとします。その人がその後、別の病気で両眼が失明した場合、失明した場合の活動能力減退率は134%で、前発の活動能力減退率は、84%です。

 

134-84=50%となります。症状固定で、障害手当金となってしまいます。治らなかったものであっても3級です。現在は、失明しているほど悪化しているのに、です。現在、このような問題があることが指摘されています。