死亡後の障害年金請求と遺族厚生年金

いろいろなところで年金の話をしていますと、中には、障害年金の存在自体を知らなかったという人が多いです。障害年金があることを知っていても、車椅子生活の方や目が不自由な方など身体に表れる障害でないとダメだと思い込んでいたという人もいます。

 

もちろん、障害認定基準を読んでいますと、すべての病気が対象ということではないことがわかります。知られているところでは、疼痛は原則として認定の対象にならないなどです。しかし、この場合でも例外があります。「疼痛は原則として認定の対象にならないが、四肢その他の神経の損傷によって生じる灼熱痛、脳神経及び脊髄神経の外傷その他の原因による神経痛、根性疼痛、悪性新生物に随伴する疼痛、糖尿病性神経障害による激痛の場合は」疼痛発作の頻度、強さなどによって認定される場合もあります。その他、「人格障害は認定の対象にならない」なども認定の対象外としてあります。

遺族年金
遺族年金

また、中には障害年金の手続きがものすごく難しい病気もあります。しかし、ほとんどの病気が障害年金を受給できる傷病に該当するはずです。もちろん、障害の重さや、その他の要件(加入要件や保険料納付要件)をクリアしていなければなりませんが。

 

ご家族が障害年金の障害等級に該当するほどの病気だったのに、障害年金をもらう前にお亡くなりになってしまったという方もいます。がんのような病気の場合、そのようなことを聞くことがあります。

未支給年金の請求は可能か

このような場合、本当に障害年金は受給できないのでしょうか。

すでに死亡した人の障害年金であっても請求できることがあります。

 

それは障害認定日請求の場合です。

中には、遺族厚生年金の支給要件を満たしていなかったが、障害厚生年金が受給できることがわかって遺族厚生年金がもらえることになったという人もいます。

死亡後だけど、カルテが残っていて、今から障害認定日請求ができるという方は、検討する余地があります。

 

死亡後の障害年金請求について

認定日請求(事後重症請求はできない)ができるようであれば、5年以上経っていても請求自体はできます。しかし、時効が5年なので、5年以上の年金額は支給されません。

 

ここでは障害年金の受給要件である、加入要件と保険料納付要件をクリアしているという前提で書きます。

障害認定日に規定の障害等級に該当すれば、また、それがカルテに残っていて診断書が書いてもらえるなら、死亡後であっても障害年金を受給できるのです。未支給年金として請求をします。

 

未支給年金は亡くなった当時、その人と生計を同じくしていた1,配偶者 2,子 3,父母 4,孫 5,祖父母 6兄弟姉妹 7,その他1~6以外3親等内の親族が請求できます。

 

ただし、何度も書きますが、本人が生きている時でしたら、事後重症請求ができるのですが、死亡後は事後重症請求ができません。

 

このように本人死亡後に障害認定日には障害年金の等級に該当していたことがわかり(障害年金の存在を知らなかったご家族が、ですが)、死亡後に障害年金を請求をして、それが認められたことで、諦めていた遺族厚生年金に結びついたということもあるのです。

 

遺族厚生年金について

遺族厚生年金には支給要件がありますから、それをクリアしなければ受給できません。

 

1,被保険者が死亡した時(被保険者とは厚生年金保険に加入している人、在職中という意味)
2,被保険者期間中に初診日のある傷病で初診日から5年以内に死亡したとき
3、1級・2級の障害厚生年金を受けられる人が死亡したとき
4,老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金を受給できるだけの保険料納付要件を満たした人(老齢基礎年金の受給要件を満たしている、つまり、公的年金に原則25年以上加入しているなど)の人が死亡したとき

 

この4つの要件を見ます。

このうち1と2の場合は、保険料納付要件が必要になります。3と4は、保険料納付要件がないのですね(障害年金を受給するには保険料納付要件がありますが)。

 

この1と2の場合の保険料納付要件とは、

死亡した人について保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること
もしくは、死亡日に65歳未満であれば、死亡日のある月の前々月までの1年間のうちに、保険料の滞納がないこと(ただし、これは平成38年4月1日前の場合)

このどちらかをクリアすれば受けられます。

 

また、初診日から5年以内であれば会社を辞めた後でも在職中と同じ扱いです。ただし、厚生年金の被保険者期間中に初診日がある傷病が原因で、初診日から5年以内ということになっているので、「傷病が原因で」ということに注意する必要があります。

 

例えば、死亡が急性心不全で、厚生年金の被保険者期間中にある初診日による病気は、糖尿病による腎症だった場合、その腎不全と心不全の因果関係を求められます。医師が証明してくれればいいのです。

 

直接の死因が被保険者期間中に初診日がある傷病と異なる場合、直接の死因となった傷病と被保険者期間中に初診日のある傷病と相当因果関係にあれば、同一傷病による死亡とみなされます。

障害厚生年金を受けられる人なら

ここで上記の3を見てほしいのですが、障害厚生年金を受ける権利のある人ならば、相当因果関係がなくても、また、初診日から5年以内の死亡でなくても遺族厚生年金が受給できるのです。

 

中には初診日から5年以上経ってしまった方もいるでしょう。

この場合でも障害認定日に障害等級に該当していたことがわかって、死亡後に、その障害認定日の時の障害年金の診断書を書いてもらい、初診日の証明も取ることができたいう人が、このことによって、後から障害厚生年金を請求し(未支給年金請求)、認められれば、障害年金を受給していた人として、遺族厚生年金に結びつくことになります。

 

さらに、このような場合もあります。

上記には、1級もしくは2級の障害厚生年金となっています。これは条文には書いてあるからですが、実務では3級の障害厚生年金の場合であっても、直接の死因の傷病と障害厚生年金の支給事由となっている傷病とが相当因果関係にある時は、2級以上の障害状態にあったとみなし、遺族厚生年金の支給要件に該当するものとして取り扱うことがあるのです。

 

これは想像の範囲なのですが、認定日に3級だったとしても、死亡するくらいなのだから、死亡直前はかなり悪化していて障害等級1級ないし、2級くらいにまで等級が重くなっていたと思われるからではないかと考えます。

 

ただし、このような取り扱いになるかどうかは死亡の原因となった傷病と同じ傷病だとか、相当因果関係があったなど認められるかどうかにかかっているかと思われます。

 

これはかなり難しいでしょうから、社会保険労務士に相談することをおすすめします。特に、がんの場合、原発性なのか、転移性なのかで変わってしまうことになります。原発性なら、他の部位のがんと関係ないと言われるでしょうし、転移性ならば認められるかどうかは相当因果関係を証明する必要があります。さらに手術後再発の場合は、手術前の初診日の受診状況等証明書と再発の受診状況等証明書の両方が必要であるうえ、手術から再発までの経緯を医師に書いてもらう必要があるなど、なかなか一般の方では医師に頼むのにもどうやって言ったらいいのかわからないだろうからです。

 

遺族厚生年金を受けられる遺族の条件

最後に、どのような人が遺族厚生年金を受けられるのか、簡単に見ておきたいと思います。

遺族厚生年金が支給される要件に該当する死亡した人に、生計を維持されていた以下の遺族が遺族厚生年金受けられることになります。


子、孫(18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)
55歳以上の夫、父母、祖父母
(支給開始は60歳から。ただし、夫は遺族基礎年金を受給中の場合に限り、遺族厚生年金も合わせて受給できる。)

このうち、子のある配偶者、子(子とは18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1・2級の者)は、遺族基礎年金も併せて受けられます。

遺族厚生年金には優先順位がありまして、1位から探していきます。1位、配偶者(夫は55歳以上)または子、2位父母(55歳以上)、3位孫、4位祖父母(55歳以上)の順です。