繰上げは損なので、説明されているはずですが

繰上げしてしまったら、いろいろと損になる部分が多いのですが、一部の人が年金は早くもらっておいたほうがいいと言われて、繰上げをしてしまった人もいます。

 

【注意点】
ここでいう繰上げと、特別支給の老齢厚生年金とは別物です。
たまにネットでも見かけますが、65歳前に年金を受け取ると損だとか、減額されるとか聞いたが、日本年金機構から手続きをするようにと封筒が来たけれど今はしないほうがいいと思っている、と特別支給の老齢厚生年金と繰上げの年金とを混同してごっちゃにして理解している人がいるので注意してください。

特別支給の老齢厚生年金のほうは、該当する年齢になったら日本年金機構から封筒が送られてきますので、それが来たら手続きをしてください。年金制度に25年以上加入していて、厚生年金保険に1年以上の加入期間がある人は、生年月日に応じてそれぞれ決められた年齢から特別支給の老齢厚生年金が受けられます。

 

老齢年金の繰上げと障害年金

さて、年金の繰上げと障害年金についてです。

老齢基礎年金を繰上げする時に、以下のような注意を受けることになっています。

 

  • 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、事後重症などによる障害基礎年金を請求することができなくなります。
  • 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、障害者の特例措置及び長期加入者の特例措置を受けることができなくなります。
  • 老齢基礎年金を繰上げて請求した後は、寡婦年金は支給されません。また、既に寡婦年金を受給されている方については、寡婦年金の権利がなくなります。
  • 老齢基礎年金を一部繰上げて請求した後、厚生年金保険に加入した場合、報酬比例部分及び繰上げ調整額は、在職支給停止の対象となります。
  • 老齢基礎年金を繰上げて請求した場合、65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金を併給できません(どちらか一方になるから)。
  • 老齢基礎年金を一部繰上げて請求すると、この分については減額率に応じて生涯減額されます(減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数)。

これ以外もありますが、長くなるので、これくらいにします。

 

これから見てもわかるように、老齢基礎年金の受給権者になってしまうと事後重症による障害年金が請求できなくなります(事後重症請求は元々65歳までにします)。同じく「初めて2級」と呼ばれる基準障害による障害年金も請求できなくなります。

 

しかし、障害認定日による請求は、「可能な場合」もあります。

以下、説明しますが、年金のことについて詳しい人以外は、後から障害認定日請求をしたい場合、社会保険労務士に依頼したほうがいいです。

後からでは、認められない場合もありますから、かなり複雑でややこしいことになります。年金制度によほど詳しい人でないと、年金事務所で説明するのも難しいでしょうから、お金がかかってもまずは、お住いお近くの社会保険労務士に相談です。

 

障害認定日による請求が可能な場合

すべて保険料納付要件は満たしている人の場合です。そこがクリアできていなければ、ダメですから。

 

1,初診日が60歳前の被保険者中にある障害認定日での請求

初診日が60歳前でしたら、何かしらの年金制度に加入していると思います。認定日請求ですから、初診日から1年6ヶ月後(もしくは症状固定)の診断書で障害等級に該当したら障害年金か老齢年金かの選択になりますから、障害年金の請求は可能となります。

初診日→60歳→繰上げ請求した日→障害認定日→65歳の順番です。

 

2,初診日が60歳から65歳未満の被保険者中にある障害認定日での請求
初診日が60歳から65歳未満で年金制度に加入中の被保険者期間にある場合です。認定日請求ですから初診日から1年6ヶ月後(もしくは症状固定)の診断書で障害等級に該当したら、障害年金か老齢年金かの選択になりますから、障害年金の請求は可能となります。

60歳→初診日(被保険者期間中)→繰上げ請求した日→障害認定日→65歳の順番です。

 

3,初診日が60歳から65歳未満の被保険者中にない障害認定日での請求

この場合は、障害認定日(等級該当)と、老齢年金の繰り上げをした日をみまして、繰り上げをした日が後にあれば、障害認定日での請求が可能になります。

順番で表しますと、
60歳→初診日(被保険者でない)→障害認定日→繰上げ請求した日→65歳
の順番です。

 

4,初診日が繰り上げ請求後の2号被保険者期間中にある障害認定日での請求
初診日が繰り上げ請求した日より後でも、初診日が第2号被保険者(厚生年金保険加入中)でしたら、障害認定日での請求が可能になります。障害認定日での請求ですから、初診日から1年6ヶ月後(もしくは症状固定)の日に障害年金と老齢年金の選択になりますから、障害年金の請求は可能です。

順番で表しますと
60歳→繰上げ請求した日→初診日(2号被保険者)→障害認定日→65歳
の順番です。

 

障害認定日でも障害年金の請求が不可の場合

初診日が60歳以降65歳未満であって、被保険者期間中にない場合

順番で表しますと、
60歳→初診日(被保険者でない)→繰上げ請求した日→障害認定日→65歳

の場合と、

60歳→繰上げ請求した日→初診日(被保険者期間中にない)→障害認定日→65歳
の順番の時です。これらに該当する場合は、できません。

 

上記の「請求可能な場合」の3と4とを比べてみるとわかりやすいと思います。

 

何度もいいますが、すべて「障害認定日での請求」であることに注意です。障害認定日に障害等級に該当しないと事後重症請求になりますが、老齢基礎年金の繰り上げをしてしまうと、それができなくなります。

 

老齢基礎年金を繰上げしてしまうと、65歳になったことと同じ扱いになることが多いので、年金事務所でも手続きをする時注意をうながしています。

 

実は、障害年金を選んでいたら、年金額が多かった、という例もあるので、老齢年金の繰り上げには注意したいものです。

 

老齢厚生年金の繰り上げをする場合の注意点

上記のとおり、特別支給の老齢厚生年金は60歳以降、生年月日によってきめられた年齢から手続きをすれば受けられるようになります。
現在これから特別支給の老齢厚生年金を受ける人は、ほとんどの方が報酬比例部分だけとなります。

 

60歳になっても報酬比例部分が支給開始されない生年月日の人は、老齢厚生年金の繰り上げ請求をすることができます。

 

報酬比例部分の支給開始年齢
男性の場合
昭和28年4月2日生まれから昭和30年4月1日生まれ→61歳から
昭和30年4月2日生まれから昭和32年4月1日生まれ→62歳から
昭和32年4月2日生まれから昭和34年4月1日生まれ→63歳から
昭和34年4月2日生まれから昭和36年4月1日生まれ→64歳から
昭和36年4月2日生まれ以降→65歳から

 

女性の場合
昭和33年4月2日生まれから昭和35年4月1日生まれ→61歳から
昭和35年4月2日生まれから昭和37年4月1日生まれ→62歳から
昭和37年4月2日生まれから昭和39年4月1日生まれ→63歳から
昭和39年4月2日生まれから昭和41年4月1日生まれ→64歳から
昭和41年4月2日生まれ以降→65歳から

 

ただし、いくつか注意点があります。

その1
老齢厚生年金の繰り上げを請求する場合、老齢基礎年金の繰り上げも同時に行わなければならない決まりです。

報酬比例部分が61歳支給開始年齢の人の場合、60歳で老齢厚生年金を繰り上げすると、老齢基礎年金も同時に繰り上げですから、老齢基礎年金は60ヶ月繰り上げることに、老齢厚生年金は12ヶ月繰り上げることになってしまいます。

 

その2
老齢厚生年金の繰り上げをする場合、老齢基礎年金も同時繰り上げとなりますが、この場合、人によって、老齢基礎年金は一部繰り上げか、または、全部繰り上げになります。障害等級3級以上の人の障害者特例、長期加入者(44年以上)の特例、坑内員、船員の特例に該当している人は、一部繰り上げが適用されます。それ以外の人は全部繰り上げになります。

 

その3
上記のとおり、障害者特例などの人は一部繰り上げができますから、そちらを選ぶことになりますが、自分の障害状態は障害等級3級以上、と前もってわかればいいのですが、自分では等級がわからない場合もあることでしょう。その場合、考えられる選択肢としては次のようになります。

(1)障害等級3級以上に該当しない場合は、繰上げ請求自体を取り下げる
(2)障害等級3級以上に該当しない場合であっても、(一部繰り上げができないから)全部繰り上げのほうを選ぶので、繰上げ請求をする(=どの場合であっても繰上げ請求する人)

障害者特例を使う予定の人で繰上げ請求を予定している場合、上記のどちらの意思なのかを確認するため、繰上げ請求を行う時に、「老齢年金の繰上げ請求意思確認書」を提出することになります。

 

老齢厚生年金の繰上げであっても、「同時繰り上げ」という決まりがあることから、老齢基礎年金も繰上げとなります。このページの前半部分に書いたように、事後重症請求ができなくなる、初めて2級(基準障害)による請求ができなくなるなどになってしまいますので、よくよく考えたうえで、繰上げに関しては決めるようにしてください。