障害年金を受給できたら終わり、というわけではなく

障害年金の申請だけなら、社会保険労務士に依頼しなくてもできるよということは、ネットでよく見かけます。または、病院の医療ソーシャルワーカーが手伝ってくれるから大丈夫と言っている人もいます。

 

確かに、簡単な場合もありますから、それは正しいことでしょう。しかし、案件の中には、かなり複雑な場合もありますし、最初は簡単だと思ったら意外と苦戦したということもあるようです。

障害年金後の老齢年金

先日も勉強会で、年金事務所に5回行ってなんとか書類を出したが、その後、書類の差し戻しになったということが話題になりました。何度も行ってやっと年金事務所で受け付けてもらったと喜んでいたら、書類の出し直しになると、がっかりしますよね。年金事務所で教えてもらいながらやっていこうと何度も行ったがとうとうあきらめたという方の相談を受けたこともあります。

 

さらに苦労して出したものの、結局は不支給になったということもあります。社会保険労務士が扱っていればきっと違った結果になっただろうこともあります。

 

老齢年金のことも教えてもらえるのが社会保険労務士

さらに言いますと、障害年金のことだけでなく、老齢年金のことも(遺族年金もですが)相談に対応できるのが社会保険労務士です。

 

医療ソーシャルワーカーの方の中には、年金に詳しい方もいるのかもしれませんが、おそらく、ほとんどの方が障害年金の手続きについてはわかるけれど、といったところではないでしょうか。

 

一般の方でも年金制度を詳しく勉強しているという方なら、この条件の場合は、A年金を選び、この条件の場合は、B年金を選ぶということがあるのだと知っているかもしれませんが、老齢年金なら老齢年金、障害年金なら障害年金のことだけ、となりがちです。

 

年金はひとり一年金が原則となっています。2つ以上の年金を受けられる場合は、いずれか一つの年金を選択することになります。

ここで間違いやすいのですが、障害基礎年金と障害厚生年金、老齢基礎年金と老齢厚生年金は「同じ事由」で支払われるため、1つの年金とみなされることです。この場合は、基礎年金と厚生年金の2つの年金ではないのです。

 

ひとり一年金というけれど、2つあるよというのは、このような場合です。この場合は、ひとつの年金とみなされ、合わせて受け取ることになっているのです。

 
60台前半の年金は、同じ事由のときのみ併給が可能となっています。障害基礎年金と障害厚生年金のようにです。
65歳以降の年金において、支給事由が「異なる」2つ以上の年金(老齢、遺族、障害)は、いずれか1つを選択することになります。

 

障害基礎年金も老齢基礎年金も選ぶことができる人の場合、そのうちのどちらかを選ぶという場合のことです。

障害基礎年金を例にとりますと、以下のどれかの組み合わせとなります。

障害基礎年金+障害厚生年金
障害基礎年金+老齢厚生年金
障害基礎年金+遺族厚生年金(又は、老齢厚生年金+遺族厚生年金差額分)

 

例えば、今まで現役時代は障害基礎年金を受けていた人が、60歳台前半になったら、特別支給の老齢厚生年金を受給できるようになることがあります。この場合、障害と老齢の両方は受けることができないので、どちらかを選択することになります。

 

このようなどちらを選ぶかによって、金額が異なる場合がほとんどです。

 

さらに、上記のように、2つ以上の年金を受けることができる場合の特例がありますから、65歳以降の年金においてですが、「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせがいいのか、「障害基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせがいいのか、金額が多い方を選択します。

 

同じように、「遺族基礎年金+遺族厚生年金」のほうがいいのか、それとも、「障害基礎年金+遺族厚生年金」の方がいいのか、年金額を比べて多いほうを選びます。
(65歳前の年金と、65歳以降の本来の年金と考え方が違います。65歳前の60歳台前半の年金は特別支給の老齢厚生年金です)。

 

ケース1★障害基礎年金2級を支給されていた男性の場合

この方のケースでは、52歳から62歳になるまで障害基礎年金のみを受給していました。

しかし、特別支給の老齢厚生年金には、障害者特例があります。現在は、特別支給の老齢厚生年金の場合、報酬比例部分しか支給されませんが、障害者特例は定額部分もでます。そのため、62歳以降は、「障害基礎年金」と「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分+定額部分)」を比べたところ、特別支給の老齢厚生年金のほうが多かったのです。

 

さらに65歳になったら、今度は「障害基礎年金+老齢厚生年金」と「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の2つの年金の選択になりました。この場合、「障害基礎年金+老齢厚生年金」のほうが金額が高かったので、こちらを選びました。

 

選択していた年金を受ける権利を失ったり、支給が停止された時、また、選択していた年金より支給停止中の年金額が高い金額になったときは、新たに選択替えの手続きをすることで、支給停止になっていた年金の支給停止解除の請求ができることになります。

 

この男性の場合、62歳で今まで受給していた障害基礎年金から選択替えの手続きをして、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分+定額部分)を選び、さらに65歳でまた選択替えの手続きをすることで、障害基礎年金+老齢厚生年金を選んだことで、一番高い金額の年金を受け取ることができます。

 

ここでいう障害者特例とは、老齢年金の制度です。特別支給の老齢厚生年金のうち、本来は受け取ることのない「定額部分」が一定の要件を満たした障害者は、受けることができるものです。

 

これは年齢によって年金の支給開始年齢が違うので、一律にはいえませんが、本来なら、昭和30年10月生まれの男性の場合は、62歳から厚生年金の報酬比例部分の年金が支給され、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることになっています。

 

これが障害者特例の要件を満たせば、62歳から「報酬比例分+定額部分」の年金が支給されるのです。障害者特例は特別支給の老齢厚生年金ですので、男性なら昭和36年4月1日以前生まれ、女性なら昭和41年4月1日以前の生まれが対象になります。

 

ケース2★妻が障害年金を受給していた夫婦の例

こちらのケースは、夫婦での年金合計額を考えたケースです。上の例では、単身の方なので、夫婦の合計額まで考慮しなくても大丈夫でした。こちらのケースは、夫婦としての合計額を考えたら、障害基礎年金を選び続けるより、特別支給の老齢厚生年金をほうが金額が夫婦合計額としては多かったという、ちょっと複雑なケースです。
 
妻が障害基礎年金を受給していましたが、年上である夫が65歳になったら、妻が老齢年金なら夫の年金に加給年金が付くということがあり、金額を再度計算し直しました。妻の年金は、障害基礎年金か、特別支給の老齢厚生年金かを選ぶことができたのです。

 

加給年金は、65歳以降(人によっては定額部分支給となったとき)、生計を維持されている配偶者(または子)がいるときに加算されますが、障害年金を受けている間は、配偶者加給年金額は支給停止になります。

この方の場合、加給年金に特別加算がついていたので、加給年金としては、年額39万円になりました。

 

妻=障害基礎年金、夫=老齢基礎年金+老齢厚生年金の組み合わせよりも、妻=特別支給の老齢厚生年金(障害者特例で定額部分+報酬比例部分)、夫=老齢基礎年金+老齢厚生年金+加給年金のほうが世帯して夫婦合計の年金額が多かったのです。

 

単純に妻の年金だけで考えていた時点では、障害基礎年金と特別支給の老齢厚生年金(定額部分+報酬比例部分)と比べたら、障害基礎年金を選んだほうが多い金額でしたが、夫に加給年金がつくことを考慮したら、夫婦合計額としては一時的に妻が特別支給の老齢厚生年金に選択替えをしたほうがいいことがわかりました。

 

そして、妻が65歳になった時点で、本来の年金が出ますから、妻=障害基礎年金+老齢厚生年金、夫=老齢基礎年金+老齢厚生年金の組み合わせに、ここでまた年金の選択替えをしました。

 

障害年金の申請は自分で手続きができるのが理想です

再度、年金の手続きの話です。

本来なら、障害年金の申請(請求)は簡単に自分で行うことができるのが理想です。しかし、現実には簡単な手続きで済む人ばかりではないのも事実です。

社会保険労務士も、国民年金、厚生年金保険の勉強はもちろん、厚生労働省から出た通達を読み込んだり、障害認定基準を読み込んだり、勉強会で勉強しあっています。

社会保険労務士の試験に合格するまでにも基礎的な年金の勉強はしていますが、旧法のこと、政省令のこと、通達のことなど試験の時以上に勉強していかないと複雑な年金制度の追いついていけません。

社会保険労務士で、障害年金を専門にやっている場合、書籍代、勉強会の費用など試験合格後にもお金を払って勉強し続けているのです。
(試験に合格するまでも何十万円も費用はかかっていますが。人によっては百万円以上費用がかかっている人も)。

このような日々研鑽していることを考えますと、一般の方や医療系ソーシャルワーカーの方では太刀打ちできない(そもそも、年金についてかなり勉強しているのなら本業がおろそかになりますが)、部分があるものなのです。

病院の医師も障害年金の診断書についてはわかっているかもしれませんが、年金のことは詳しくありませんし、障害年金の申請(請求)書類にはどのようなものがあるのか、どんな種類の書類が必要かまで、わかってはいないことでしょう。

なるべくなら、医療系ソーシャルワーカーと年金制度がわかる社労士とが組んで業務ができるのが一番いいのですが。最近は、病院の職員、医師など参加して、障害年金について勉強会を開いている病院もあるそうです。

なお、社会保険労務士と一口に言っても、障害年金を専門にやっていない、年金自体をあまりやらない労務顧問中心の社会保険労務士がいますから、障害年金の代行を依頼する予定がある人は障害年金をメインにやっている社労士を選んだほうがいいでしょう。